種の多様性について
これは、一見、わかりやすい多様性です。生物の「種」レベルの多様性。
種というのは、動物を特定する 場合に、「その個体」の前の段階の認識の単位で、分類学で扱う単位の一番細かいものです(亜種という形で個体群が識別される場合もあるので一番細かい、というのも言い過ぎかもしれませんが)。
例えば、ホンドタヌキ。例えば、クロメダ カ。あるいはスズメ、ハシブトガラス、ウグイス、とか。あと、ヒト、とか。
種の概念を厳密に考え始めると実は結構ややこしく、実は「人 類が、なんかそういう風に感じてしまう動物の違い」がベースにあるようです。それを厳密化するために解剖学的なアプローチが続けられてきました。最近では、これに遺伝子の分析を入れることでより精密化する、という事が行われているようです。「種」の定義の仕方も様々あるようで、一見自明の事のように見えて、実は結構手強い概念のようです。
が、それは、まあ、おいておいて。
生活するそれぞれの種は、環境の中でそれぞれの位置づけをもっている、というか、役割を持っている...というか、役割を演じています。
種の多様性を考えた場合、重要だなと思うのは、多様な種が「同じところに同時にいる」という事だと思います。つまり、 「環境」というものを想定しないといけないわけです。
まったく地理的に関連性のない、遠く離れた地域に生きる生物を離れ離れに1種2種と数えてみ ても生物多様性にはなりません。同じ環境の中で、同時に、それぞれの役割を演じながら多様である、という事が重要なわけですから。
つまり、ライブな状態で種が多様である事。
例えば、ある地域にある種の渡り鳥が渡ってこなくなったとします。その鳥が絶滅したわけではなく、その地域の環境的な要因で来なくなってしまった。この場合、種の多様性は失われているのでしょうか。その鳥(の種)はピンピンしているのだから、種の多様性は失われていないように見えますが、「その地域」においては失われている事になります。
つまり、種の数は減ってはいないけれど、種の「多様性」が失われている、というケースがあるわけです、というか、ほとんどはそういう事態なんだと思います。
最近、東京都には、ゲンゴロウが生息していないという判定を下されました。「日本の水生昆虫」という図鑑があったとして、その図鑑からゲンゴロウという種が消えることはありませんが、でも、東京都では「ゲンゴロウもいる」という種の多様は失われてしまったわけです。生物多様性という中で考える「種の多様性」とは、そんな風なごくローカルな問題なんだと思います。
だから、「東京にいなくなっても他の県に行けばいるわけだから安心、種の多様性は失われていない」と考えるのは間違いで、今、ここに、かつていた種が「いなくなった」という事が、種の多様性が失われた状態だと思います。
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種の多様性が失われる=ある種が絶滅してしまう、という事ではない。
絶滅しなくても、種の多様性は失われる。
だから、「種の多様性」と「種の絶滅」を隣あわせや対になる概念として扱うのはキケン。そもそもレイヤーが違う。
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あるローカルな環境を「ステージ」とイメージしたときに、そこに登場してくる「役」の数が多様性を決めているという風にも理解できる。
環境をステージ、種を登場人物として語る、というのは良いアイディアかも。
で、自分が小学生ぐらいだったとして、種の多様性は大切で、そこに暮らす生物が多種多様な状態を続けていかなればならない、という話を大人から聞いたとして、ごく素朴に疑問だろうなあ、と思うことがあります。
それは
「じゃあ、ゴキブリは?蚊とかハエは?畑の作物を食べるアオムシは?」
みたいな事です。いわゆる人間にとっての害虫は種の多様性の中に含まれてるの?
これは、50才の僕自身も素朴にギモンなんです、というか、当然種の多様性の中にヤツらも含まれているわけなんですが、人間としてどう対処するのが正解なのかよくわからない。
ゴキブリは維持しなければいけないのでしょうか。
まあ、今のところダントツで個体数は多そうですから特に気にしなくてもいいのでしょうが、生物多様性の一員にゴキブリも当然入っているわけですから、それに対してどう接すればいいのか、というのは、なんか、すっきりしないですね。
別にゴキブリ、毒もないし、殺す理由は「気持ち悪い」からなんですよね。いなくなって欲しい、と思うのは、当然人間のエゴです。
それと、人間を殺してしまうかもしれない生物をどう考えるのか。例えばコレラ菌とか病原性大腸菌とか。さらに、生態系の一部をなすものすべてを対 象とする なら、生物とはされていませんが、各種のウィルスも仲間に入ってきまますよね、多分。その中には病原性のものも含まれまれますよね...。
「じゃあ、ゴキブリは?」と質問されたときに、どう答えるのか。対象がコレラ菌なら、「キミが死にたくなければ殺すしかないでしょ」となるわけでしょうが、ゴキブリは?むずかしい。
まあ、僕は見つけたら即スリッパでたたきつぶしてますけど、そのたびに「じゃあ、ゴキブリは?」というギモンが頭の奥のほうに浮かびます。
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