2022/06/18

ラモーンズに帰ってきた

一度はまると、ヘビーローテーションで音楽を聴いてしまうという癖がある。一昨年は半年ばかりファンカデリックばかり聴いていた。昨年はトッドラングレン。今年の初めはフェラクティ、そのあとニールヤングを聞き続け、今はラモーンズばかり聴いている。

ラモーンズ中毒は、もう何度も罹っている。ファーストアルバムの日本発売が1977年ぐらい。17才の頃だ。田舎のレコード屋に注文を入れて取り寄せてもらった。そしてさっそく人生最初のラモーンズ中毒にかかった。それから、数年に一度ラモーンズの季節がやってくる。今回は何度目だろうか、もう覚えてはいない。

基本的に速度の速いロックンロールだが、奏法が独特だ。ドラムはひたすらタイトな8ビート。ギターとベースは、ひたすら8分音符ダウンストロークを繰り返す。ギターコードは、6弦から1弦まで全部ならす。ベースも複数の弦で鳴らす。結果、トータル8弦の1本の楽器がストロークされているかのようなサウンドが出現する。そこに、ちょっとふにゃふにゃしたボーカルが乗っかる。メロディは意外とポップなものが多い。結果、ビーチボーイズとモーターヘッドが合体したような、明るくてささくれ立った独特のサウンドが生まれる。これがクセになり、次々と聞いてしまうのだ。まるで、サンドペーパーでこすり続けるような痛気持ちいいサウンド。

同じ頃デビューしたセックスピストルズやクラッシュ、テレビジョンやリチャードヘル&ヴォイドイズといったパンクバンドと決定的に違うのが、その「遊びのなさ」だろう。ひたすらタイトに同じスタイルを繰り返す、その厳しさというか、規律というか。メンバー全員がらモーン姓を名乗っているが、血のつながりもない。ラモーンズのルールなのだ。秘密基地に集う、探偵ごっこに夢中になる、ショッカーごっこで走り回る、ラモーンズになる少年たち。衣装もおそろいの黒皮ライダーズジャケットに破れたブルージーンズだ。そしてフロントマンが長髪というのも当時のパンクの一般論からすれば異質だった。パンクからも自由だったパンクバンドなのだ。唯一無二のラモーンズ。

YouTubeにラストライブの模様がアップされているんだが、これがまた、最速の演奏。とにかく速い。本当に速い。そして、その数年後にボーカルのジョーイラモーンが脳腫瘍で亡くなってしまい、後を追うように主要メンバーが次々に天に召されていった。ラストライブで最速を披露して幕を閉じた。

ラストショー(冒頭にモーターヘッドの亡きレミーキルミスターが出ている)
https://www.youtube.com/watch?v=2fmoLM1kMx0

何の演出もない白ホリのステージにマーシャルだけが積み上げられている舞台、かっこいい。

ラモーンズを定期的にヘビロテしていて思うのは、これはひとつの物差しなのかもしれないと言うこと。最初期は時代の気分にぴったりとフィットしていたラモーンズだが、次第にずれていき、現在ではちょっとしたノスタルジーとともに、現代の気分の閉塞した気色悪さを浮き彫りにする音楽になっている。ラモーンズはひとつの基準であり、お手本なのだと思う。「あんたのルールはどこにある?」「いつの間にかSNSで流れてくる他人が作ったルールに寄生してるんじゃないのか」。SDGsにせよ、ダイバーシティにせよ、本当に腑に落ちているのか、テキトーに迎合しているだけなのではないのか? 今一度、ラモーンズ的な「正しさ」を! それは胃の腑の正しさだ。

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2022/04/10

答えがない

人々がインターネットにつながったスマホを持ち、高解像度衛星写真で偵察画像が撮影される以前ならば、隠しおおせた、もしくは発覚するのに時間がかかった現実が、あっという間に可視化される。その現実と食い違うことを表明すればたちどころに嘘とばれる。

ウクライナ戦争はそういう今までにない情報環境の中での戦争だ。世界中がリアルタイムに見ている環境の中で、それでも侵攻して殺す。この「全部をみんなが見ている」状況をロシアはどうとらえているのだろうか。

いくらエビデンスを積み重ねて罪を問うても、それは卑怯なフェイク情報だと言いつのり、絶対にかみ合わない。

どうすれば決着をつけることができるのか。答えがない。

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2022/04/03

ドライブ・マイ・カー

話題の映画「ドライブ・マイ・カー」を観てきた。

とても繊細な脚本で、この長尺を慎重に選び抜かれた言葉で違和感なく書ききるには大変な力量が必要だと感じる。ほぼセリフで構築された映画で、その三時間超の尺も必然的なもの、物理的に必要な適正なものだと思う。
観終わって、セリフで頭が出パンパンになった。そのリハビリのために、家に帰ってから、弥次喜多物のくだらない映画を観た。

とても良くできた良い映画だったが、2点、素朴な指摘を書き留めておきたい。
1点目は、広島の演劇祭の主催者が(この二人組、とても良い)、演出家には「何かあると困るので」という理由でドライバーをつけるのだが、なぜ役者にはつけないのか。リスクヘッジの観点からすれば、役者のほうがいろいろな意味でアブないのではないか。
2点目は、透子さん演じるドライバーが、広島に来てゴミ収集車のドライバーをしていたというが、設定上は3か月ほど前に免許をとったばかりでおそらく普通免許だと思うが、それで「あの車のドライバーをしていた」と指さすごみ収集車のドライバーができるのか。

ラストシーンの韓国のくだりは、いろいろな解釈があるだろう。過去の罪意識を象徴する顔の傷を消して、大好きな犬と一緒に、自分を生きなおすきっかけを与えてくれた家福の赤いサーブに乗っているという彼女の「+」の印がそろっている。ストーリー的な帰結はともかく、彼女にとっての「+」のシンボルをすべて手に入れた彼女の生きなおしを祝福すればいいのだと思う。久しぶりにこんなラストシーンの映画を観た。昨今ではなかなか得難い映画体験だと思う。

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2022/03/17

デジタル戦争

夕べの東北震源の地震にはキモを冷やした。今回、東日本大震災とはメカニズムが違うらしい。
太平洋プレートの内部での地震活動とのこと。だから津波も小さくて済んだ。

しかし、つい戦争を始めてしまうヒトの本性の未開ぶりとは対照的に、デジタル技術はよかれ悪しかれ進化している。
ついに、Twitter上でも戦争が行われるようになってしまった。
そして、侵略を受けた国の大統領が、今まさに攻撃されている都市にいながら、他国の議会でオンライン演説している。
インターネット以前では考えられなかった戦争が起こっている。

こんな時代なのだなあ。

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2022/03/10

ロシアのウクライナ侵攻が始まって2週間、ざわついた気持ちからなんだか諦めのような気持ちになってきた。

テクノロジーがいくら進歩したとて、人間の中身はそう変わらないのだな。槍や石ころが、現代兵器に変わっただけだ。テクノロジーだけが進歩しただけで、人の脳が高度化したわけではなかった。

リモート勤務でずっと家にいるせいもあるのだが、そんな事をむりやり考えさせられた春。

 

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