ラモーンズに帰ってきた
一度はまると、ヘビーローテーションで音楽を聴いてしまうという癖がある。一昨年は半年ばかりファンカデリックばかり聴いていた。昨年はトッドラングレン。今年の初めはフェラクティ、そのあとニールヤングを聞き続け、今はラモーンズばかり聴いている。
ラモーンズ中毒は、もう何度も罹っている。ファーストアルバムの日本発売が1977年ぐらい。17才の頃だ。田舎のレコード屋に注文を入れて取り寄せてもらった。そしてさっそく人生最初のラモーンズ中毒にかかった。それから、数年に一度ラモーンズの季節がやってくる。今回は何度目だろうか、もう覚えてはいない。
基本的に速度の速いロックンロールだが、奏法が独特だ。ドラムはひたすらタイトな8ビート。ギターとベースは、ひたすら8分音符ダウンストロークを繰り返す。ギターコードは、6弦から1弦まで全部ならす。ベースも複数の弦で鳴らす。結果、トータル8弦の1本の楽器がストロークされているかのようなサウンドが出現する。そこに、ちょっとふにゃふにゃしたボーカルが乗っかる。メロディは意外とポップなものが多い。結果、ビーチボーイズとモーターヘッドが合体したような、明るくてささくれ立った独特のサウンドが生まれる。これがクセになり、次々と聞いてしまうのだ。まるで、サンドペーパーでこすり続けるような痛気持ちいいサウンド。
同じ頃デビューしたセックスピストルズやクラッシュ、テレビジョンやリチャードヘル&ヴォイドイズといったパンクバンドと決定的に違うのが、その「遊びのなさ」だろう。ひたすらタイトに同じスタイルを繰り返す、その厳しさというか、規律というか。メンバー全員がらモーン姓を名乗っているが、血のつながりもない。ラモーンズのルールなのだ。秘密基地に集う、探偵ごっこに夢中になる、ショッカーごっこで走り回る、ラモーンズになる少年たち。衣装もおそろいの黒皮ライダーズジャケットに破れたブルージーンズだ。そしてフロントマンが長髪というのも当時のパンクの一般論からすれば異質だった。パンクからも自由だったパンクバンドなのだ。唯一無二のラモーンズ。
YouTubeにラストライブの模様がアップされているんだが、これがまた、最速の演奏。とにかく速い。本当に速い。そして、その数年後にボーカルのジョーイラモーンが脳腫瘍で亡くなってしまい、後を追うように主要メンバーが次々に天に召されていった。ラストライブで最速を披露して幕を閉じた。
ラストショー(冒頭にモーターヘッドの亡きレミーキルミスターが出ている)
https://www.youtube.com/watch?v=2fmoLM1kMx0
何の演出もない白ホリのステージにマーシャルだけが積み上げられている舞台、かっこいい。
ラモーンズを定期的にヘビロテしていて思うのは、これはひとつの物差しなのかもしれないと言うこと。最初期は時代の気分にぴったりとフィットしていたラモーンズだが、次第にずれていき、現在ではちょっとしたノスタルジーとともに、現代の気分の閉塞した気色悪さを浮き彫りにする音楽になっている。ラモーンズはひとつの基準であり、お手本なのだと思う。「あんたのルールはどこにある?」「いつの間にかSNSで流れてくる他人が作ったルールに寄生してるんじゃないのか」。SDGsにせよ、ダイバーシティにせよ、本当に腑に落ちているのか、テキトーに迎合しているだけなのではないのか? 今一度、ラモーンズ的な「正しさ」を! それは胃の腑の正しさだ。