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2006年5月 8日 (月)

品質の問題

さて、昨日と似たような話を(こうやって書いていけるのがいいですね、ブログ)ちょっと別な角度から考えてみたいと思います。

物事がデジタル化すると、速くなったり、安くなったりする。

しかし、デジタル化が行われ、パソコン環境であれこれできるようになる間には、なんらかの形で圧縮なり、変形が起っているわけで、そこで「品質」が下がる、という心配があります。
ソニーのDVCAMという機材が世の中に現れた時、まさしく、この「品質がさがっている」という問いかけが、撮影や編集の現場でさかんになされていました。

DVCAMは、家庭用のDVカメラ(ソニーならハンディカム)で使われている「DVコーデック」という映像圧縮技術を使った業務用の規格。このサイトのタイトルにもなっている「1/5圧縮」を行う画期的なもので、もしもこの規格が無かったならデスクトップビデオを使った映像制作がここまで普及する事はなかったでしょう。
DVCAM(DV)では、そのデジタル化→圧縮の過程で、色の情報がかなり間引かれてしまいます。それを指摘してVEさんたちは「プロが使う道具じゃない」と現場で不満を表明していたものです。
たしかに、DVCAMで撮影した映像は、それまでの標準的なカメラ、ベータカムで撮影したものと比べると、ちょっとなんていうんでしょう、人工的な印象がありました。一日DVCAMの素材を編集したりプレビューしたりすると、なんか目がちかちかする...。
しかしながら、現在では、DVCAMは事実上の業界標準のフォーマットになり、不満を述べる人はいなくなりました。

こういう事を振り返っていて思うのですが、人間の感覚というのは「慣れる」あるいは「適応する」ものなんだなと。今ベータカムで撮影された「自然な画調」の映像を見ると「なんか眠い画」と思うことがあります。眼と感覚がDVCAMという規格に見事に適応してしまったんですね。「画がなんかペラペラだなぁ」と思っても、きちんと動いて、見た目に近い色も階調も再現されているわけですから、仕様上はともかく、感覚的には「許せる」わけです。しかも、撮影〜編集までの圧倒的なコストパフォーマンスの良さがある。もちろん、DVCAMカメラの性能自体も上がってきていたんでしょうけれど。そして、普及してくると、DVCAMを使わなければ仕事にもならなくなる。かくして、さまざまな「適応」が業界全体に広がり、DVCAMやDVで撮影してFCP(など)で編集、カンパケ、という映像制作が定着したわけでした。僕なども、そのおかげで不景気もなんとか乗り越える事ができそうです。しかし、もしも、このデジタル化=デスクトップ化された制作環境がなかったとしたら、と思うとぞっとしますね、特にこの2年ぐらいを振り返ると「あ〜本当に助かった!」とつくづく思います。

こう考えてくると、じゃあ、DVCAM(DV)+パソコンの映像制作は、コストのために画質を犠牲にして成り立っているのか、というギモンが浮かびます。
これは、難しい...。ある意味、そうだとも言えるけれども、そういってしまう事にはかなり抵抗があります。たしかに、DVCAM(DV)のスペック上の画質は、たとえば、デジタルベータカムと比べると悪い、実際にも、久々にデジベの画をみると「おお、やっぱりきれいだなぁ」と思います。
ただ、映像の画質というのは、映像作品のクオリティのうちの、一部分です。画質の良いつまんない画よりも、才能あるカメラマンが撮った画質イマイチのピリッとした構図のほうが圧倒的にクオリティが高い、と僕は思います。
高圧縮の映像をコンピューターで取り扱う、というスタイルは、ポストプロダクションに完全依存したスタイルよりも、良い点がたくさんあります。しかも、多くのユーザーの工夫や努力によって物作りの一つの方法としてかなりこなれてきているので、「お金が無いときのポスプロのかわり」といった位置づけではもう語れないと思います。もし仮に、コストが同等であったとしても(ありえませんが)、今、デジタルべータカム+ポストプロダクションを使うかどうかは微妙なところですね。

デスクトップビデオは、個人が、自分の手で映像を取り扱う...昔のドキュメンタリーのプロダクションがフィルムでやっていたような事の現代版というイメージかな、と思う時があります。全部のノウハウを自分が持ち、その引き出しが充実してくればくるほど「巧く」なる。ともすれば観念の世界にいってしまいがちなディレクターという人種を「職人的な」世界へと連れ戻してくれる道具でもありますね。

とりあえずこれで、振り返って総括、という気分は収まったので、次回からはもう少し、具体的でみみっちい事を書いていこうと思います。

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コメント

祝!ブログ開設!!
ちょこっとご無沙汰のPOPです。
とうとう始めましたね(笑)ブログ。
いいですね~ブログ、とても気軽(いい意味ですよ)な感じで。
どんどん更新してくださいね。
千崎さんが書かれる文章好きですので、楽しみにしています。
GW半ばに「ぎっくり腰」をやってしまい、何かと悲惨な状況が続いています(悲)。まぁ、これも「職業病」かと(笑)。
去年の目標が「今年はブログを始めるぞ!」だったのですが、
恥ずかしながら未だ実現していません。
忙しいことを理由に放置状態にしていた好奇心(オーバーかな・笑)
をそろそろ復活させておかないと、何かとても「ヤバイ」気がしてきました。
いつも「いい刺激」をありがとうございます。

投稿: POP | 2006年5月 9日 (火) 01時03分

POPさん、おひさしぶりです。ブログ、更新カンタンで楽しいです。洗練されたツールは使うのもたのしくなる。
腰お大事に、座ってばかりいるので、僕も気をつけないと。

投稿: 千崎 | 2006年5月 9日 (火) 22時43分

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