« 上野のエジプト | トップページ | 映像ディレクションの作法/オーバーラップ »

2009年9月22日 (火)

映像ディレクションの作法/スジ

日が短くなりはじめるとあっという間ですね。今年は秋も早そうです。

先日、とあるプレゼンの企画書に、業務歴を書く欄があって、指折り数えてみると、あれ、もう25年?
フリーになってからでも20年以上になります。
そうか、と。
ここらで、映像のディレクションのことをまとめて考えてみるのもいいかな、と思ったわけです。秋ですし。
映像ディレクションといっても、なんというか総合的な技術なので、すぱっと割り切れるようなことが書けるわけではありませんが、つらつらと思いついたことを書いていこうと思います。

誰かに仕事のことを問われて答えにくいのが「ディレクターって何するひと?」というものです。
答えにくい質問です。でも質問する人は世間話の続きですからそんなに深い答えを期待しているわけじゃない。だから「映像作るときに建築の現場監督みたいに、あれこれ指示したりする仕事」と答えています。相手が年寄りだと「映画監督の小型版」みたいなことを言ってごまかしたり(笑)。

ディレクターは、いったい何をやっているのか、答えるとすると「映像情報にスジを通す」という仕事だと思います。
そのままでは個々の情報でしかないものを、スジをとおして、「伝わるように」していくために、様々なことを考えたり、実行したりする仕事です。
これは、映像じゃなくても色々な分野に存在する仕事です。出版物の編集でも、デザインでも、建築でも。それを映像について行うのがディレクターです。
おもしろくする、とか、きれいにする、とか、それもあるんですが、根本的には映像的なスジ通しだろうと。
いくらおもしろくても、きれいでも、スジが通らない演出は何も伝えることができません。
(おなじようにスジのとおらないデザインはカッコだけ、スジの違う建築は倒壊します)

この「スジ」、ロジックのスジを通す(構成やシナリオのスジ)、というのが一番わかりやすいものですが、それ以外にもいろいろあります。
たとえば、テンポよく畳み掛けることを要求しているシーンがあったとして、そのナレーションをじっくり読ませてしまったり、編集のテンポをタメてしまったりしては、時間軸の要になる「テンポ」のスジは滞ります。
また、明るくのびのびとした作品なのに、錆び色バックに古印体のタイトルでは意匠的なスジが通りません。
また、場合によっては、ロジックのスジを犠牲にして「勢い」のスジを立てる、というようなこともあるし、その逆も。
映像は情報の束のようなものなので、スジも何種類も同時に存在するわけです。
こういうのは初歩的な例ですが、こういうことを映像のあらゆるレベルで判断するのがディレクターの仕事です。

...と、僕は思っているのですが、実はディレクターとして成立するための「立ち方」はいろいろあると思うんです。それこそ、ここ一発の「かっこよさ」だけに長けることでプロのディレクターをやる人もいるだろうし、むしろ、シナリオを組み立てるところに重点を置いている人もいると思います。
ですので、あくまでこれは「私の」という事で、あまり一般性はないのかもしれません。

ただ、ずっとこの仕事をやってみて、自分が何をやっているのかを自分なりに分析してみると、「あーやっぱりスジ通しだな~」と思えます。

次回からは、もう少し演出のチマチマしたテクニカルな側面について書いていきたいなと思っています。
でえくがかんながけや、ノミ入れについて語るように書ければな、と思っていますが。

|

« 上野のエジプト | トップページ | 映像ディレクションの作法/オーバーラップ »

映像制作/演出」カテゴリの記事

コメント

最近は「監督」も肩書きが単なる「演出」になってしまってますね。
スタッフの中にはきちんと「監督」と呼んでくれる人もいますが…。

以前は客のある意向があったとしても、監督がうんと言わなければ認められなかったもんです。
代理店も「監督がOKしないんで…」とか言って、作品性が崩れて完成度が下がってしまうような修正には容易には応じなかった時代がありました。

今は信じられないような演出案や修正内容が簡単にこちら側に降りてきます。
得てしてそういう修正内容は視聴者には影響のないところだったりして、むしろ修正することで作品的にはひずみが生じたり、胡散臭くなったりする場合が多いですよね。
「現状でのデメリット(大したデメリットとは到底思えないものがほとんどですが)を修正することで、あらたに生じるデメリットの方が大きくなり得る可能性があるので、このままの方がいいのでは?」
などどアドバイスしても、担当者が上層部を説得できない、もしくは代理店が担当者を納得できない場合が多く、こちら側がいくらよかれと思って仕事を進めようとしても、クライアントは作り手主体の判断を下してしまう。
結果、いいPR映像ができないというわけです。

千崎さんが言うとおり、「スジ」を一番うまく通せるのはディレクターなわけで、客は素人だということを皆忘れてしまうんですかね。

「大工の言うことを聞かないで、住みやすい家が建てられるでしょうか。」と声を大にして言いたい。
それから図面や設計図で、きちんと完成後をできるだけイメージする努力をしてほしい。できた後に「やっぱり寝室は2Fに」と言われても、それはルール違反というもんです。

なんだか愚痴みたいになってしまいましたが、そんな風に思っているDは多いのではないでしょうか。

千崎さんの演出話、これからも楽しみに読ませていただきます。

投稿: DAN | 2009年9月24日 (木) 23時03分

>DANさん。
そうですね、制作環境そのものが変わって来ています。多分、クライアントと現場の間にある、まとめる責任を負っているハズの人たちが宗旨替えしたんでしょう。良い物にしたい、とか、そのためには、何が優先されるべきか、みたいなところが妙なことになっていると思います。僕もそう感じるし、まわりの話を聴いていもそんな感じですね。DANさんのご意見もまさしくですし。
映像一本のスジを通すためには、色々と素人には手におえない技術がからんでるんですけどね、ホント。技術部さんもそうですが、演出部だってそうなんですよね、そこがイマイチ理解されない風潮が悲しいですね。でも、仕事ですのでなんとか、どんな無体な修正でも傷を浅くしてせめて作品が死亡しないように努力するしかないです。時々救命医の気分になることがありますよ。
まー、肩書きについては、僕はまちばの「演出屋」だと思っていますので、別に何でもいっかー、と思っていますけど(笑)。

投稿: 千崎 | 2009年9月26日 (土) 23時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/176845/46278247

この記事へのトラックバック一覧です: 映像ディレクションの作法/スジ:

« 上野のエジプト | トップページ | 映像ディレクションの作法/オーバーラップ »