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2009年11月18日 (水)

映像ディレクションの作法/つながるように撮る

めっきり気温が下がってまいりました。新型じゃないインフルエンザにも気をつけねば。

えー、映像ディレクションの基本を考えてみようシリーズ、今回は、撮影時のディレクションについて。
ディレクターに必要な、撮影現場でのスキルが「つながるように撮る」です。
撮影した後、当然編集するわけですが、そのときに繋がるように撮っておかなければいけません。
...という事を考える前に、「繋がる」とはどういう事か、を考えます。

カットがちゃんとつながっているという状態とは、映像演出の常識的には、「違和感なく繋がっている」という意味です。
つまり、「あ、カット変わった」と観客に意識されない、違和感のないつながりという事になります。
違和感無くカットがつながるためには、一般的に次の2つの条件が必要だとされています。

ひとつは「被写体やサイズが違うこと」です。
先行カットがある人物のフルショットだったら、次のカットは別の人やモノのカットに行くか(カットアウエイ)、同じ人物のサイズの違うカット(マッチカット)じゃないとつながりません。
別の言い方をすると「同じ被写体の同じサイズ同士は繋がらない」という事になります(いわゆる同ポジ問題)。

もう一つは「方向性と位置関係が混乱しない事」です。いわゆるイマジナリーラインの問題ですね。
イマジナリーラインについては、ちょっとややこしいのでまたエントリをあらためるとしますが、簡単に言うと、カットが変わったとたんに、被写体の「向き」が変わったようにみえたり、「位置関係」がひっくりかえったように見えるカッティングは「つながらない」わけです。編集時、というよりは撮影時に留意すべき事柄ですね。それを判断するためのツールがイマジナリーラインです。

で、今回はこのひとつめの「サイズ」における、つながるつながらないについて。
基本は「同じ被写体の同じサイズ同士はつながらない」です。なので、撮影時に今撮っているカットがどのカットにつながるのかを考えてサイズを調整する必要があります。
しかし、ドラマ作品なら計画的に進めていけますが、取材の場合はそうもいきません。たいていは、つなぎの可能性をその場でいくつかざっとイメージして、寄りと引きと2タイプ撮ったり、一応ズームしておいたりするわけです。

具体的には例えばこんな事です。
ある作業をしている人を撮影するとします。
最終的な仕上がりは、その作業一連をダイジェストとして見せたい。
この場合、まず作業一連を引いたカットで押さえ、その後でもう一回同じ事をやってもらって、ポイントポイントをアップで撮影しつつ、顔の表情などのインサートカットも押さえる。
こうしておけば、引きと寄りを使って自由に作業をダイジェストできるわけです。一発勝負の場合は、2カメ以上を用意してで寄りと引きを同時に収録します。
こうしてひとつの被写体について、サイズのバリエーションを用意することで、編集時の自由度を確保します。これで、引きから寄りに推移する説明的な繋ぎも出来るし、寄りから入って引きに展開する意外性を持った繋ぎも可能になります。また、流れの省略や引き延ばしといった時間操作も編集によって可能になるわけです。
上記の方法は、取材だけじゃなく、ドラマ的なシチュエーションにも応用できます。

「同じ被写体の同じサイズはつながらない」わけですが、「違う被写体の同じサイズ」はどうでしょう。例えば、AさんとBさんのFS同士をつなげるような場合。この場合は「狙いによる」と思います。AさんがFSだったらBさんはBSなどサイズを変えたほうが自然ですが、両方FSであってもつながらない程不自然ではないでしょう。事実、こういう繋ぎは、小津安次郎の映画などではよく使われています。僕はちょっとした違和感を感じますが、そこが「小津映画っぽさ」を作る要因のひとつとも言えるでしょう。

...で、あうく忘れるところでしたが、実はもう一つ、繋がらないケースがあります。
それは、時間帯や色、光が繋がらないという場合。
同じシーンで直結するカットなのに、撮影の時間帯や天候が極端に異なってしまったために、画の雰囲気が繋がらなくなって違和感が出てくる場合があります。
多少色温度が違う、ぐらいならば編集の時にカラーコレクションすればいいのですが、明らかに影の出方が違う、とか光の雰囲気がまるで違う、といいう場合には、編集上の手当ではどうにもならない場合も、ままあります。
これは撮影のスケジューリングの時点で、違和感が出ない時間帯に撮影できるように配慮したり、そもそも時間帯に左右されないように照明で光を作るなどで対応するしかありません。
また、諸々の事情で「光が繋がらなくなってしまう」と予測される場合には、それが不自然には見えないように、構成(シナリオ)で工夫しておくとか、時間経過のための演出を別途用意しておく必要があります。まあこれも原則論で、編集の腕しだいでなんとかできてしまう場合も多いのですが。

この「つながるつながらない」は、多分に主観的な要素も、あるにはありますね。
基本が「自然に見えるように」ですから、その「自然」に感じるかどうかの感受性には、人によってグラデーションがあるし、時代時代のトレンドもあると思います。
また、「別に不自然でOK!」という場合もあるでしょうし、「逆に不自然にしたい!」ということもあります。
さらに言えば、「サイズが違うカット同士」というセオリーにのっとっていても、アングルやレンズにによっては「んー、なんか不自然...か?」という微妙なケースもありますね。例えばレンズの焦点距離が必然性もないのにあまりに違う場合などは、うまくは繋がりません。逆に、ほぼ同じサイズであってもアクションとのからみで問題なくつながってしまう場合もあります。

要は、ディレクターとして上記の基本ルールをどう「運用」するか、という事だと思います。
ルールを分かった上で、それをどう守るか、どう破るか、そこら辺で「センス」が問われる...というワケです。
基本のルールやセオリーは、知らないより、知っていた方が、より「自由になれる」というのはどんな分野でも言える事だと思いますね。

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