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2009年11月 1日 (日)

映像ディレクションの作法/ズーム

秋深し、ディレクションの細かい部分を考えてみようシリーズ。
今回はズームです。

僕は、ズームはあまり使うほうではありません。
番組1本、単焦点レンズだけを使って撮る、というような事も十年ほど前はやってました。
今思うと、なぜそんなにズームが憎かったのか、とも思いますが、ともかく今回はディレクター的ズーム論をかいて行きたいと思います。

被写体は同じだとしても、演出的には引きの画と寄りの画は意味が全く違います、当然。
この引きと寄りをカットを割らずに、連続的に変化させるのがズームです。

ズームイン、これは、一般的には引きの画からある要素をピックアップしてそこに連続的に注目させるという場合に使います。群衆の中から一人の人物にズームインしていく、など。
それだけ考えると、情報量の多い状態から少ない状態へと遷移していくと思いがちですが、実はむしろ、情報量というよりも、情報のレイヤーを連続的に切り替えて行く、という効果だと思います。
群衆と見えていた情報から一人の人物がピックアップされることで、その人の年格好や表情といったティディールへと情報の次元が移り変わって行くのだと思います。
で、ズームアウトはその逆の遷移をしていきます。

で、僕はなぜズームをあまり使わないかというと、ひとつは単純に「なんかアカぬけない気がする」からです。
どうも、すぱっとカットを割ってしまっていいのに、そこがズームだったりするとまどろっこしい、ズームデュレーション分がムダ、どんくさい、という気がしてしまいます。
まあでも一般的にも、「しっかり撮ろうか」、という時にズーム多用、というのはあまりナイ気もしますね。
撮影現場でカメラマンが気を利かせてズームし、僕自身も「それもいいかな」と思った場合でも、編集時点ではカット頭とカット尻しか使っていない場合も多々あります。
もうひとつは、ズームショットは、なんか、被写体に向かう姿勢として安直な感じがしてしまう、というのものあります。同じポジションからズームレバーひとつで寄ったり引いたりするわけですので。
逆に言うと、すいすいズームを使って作ると軽みというか、お気楽な雰囲気を出すことが出来るので、意図的に軽くしたい場合など、突然ズームを多用、という事もないこともありません。

それ以外に使う場合といえば、ズーム以外では表現できないカットの場合(あたりまえか)です。
どういう場合かというと、例えば引きのカットから寄りのカットに行く時に、その切り替わりの時間を省略したくない場合です。ズームイン(ないしアウト)しているリアルタイムな時間の流れが重要な場合。 ライブ感が必要な場合です。
カット変わりには必ずなんらかの時間の省略がともないますから、そこをはしょっていない、そのままの時間軸の提示をしたい場合です。

これまで書いて来たのは、ズームの最初とズームの終わりがカット変わりのような機能をもっている場合ですが(そう考えるとズームはトランジションの一種とも考えられますね)、ズームにはこれ以外にも使い方があります。
それは、カットのサイズとしては例えば人物のBSなどで、じっくりズームインしていたりする場合です。サイズはズームの始まりと終わりはだいたい似ているので、先ほどの群衆から人物一人をズームで切り取る場合とは違って、カットの意味そのものは、カットアタマとカット尻で変わるようなことはありません。
この場合のズームは、意味を変えずに、カットの始まりから終わりまで、ある緊張感を持続させるような効果があります。これを上手いカメラマンがやるとカットによっては効果的ですね。こちらの演出はよくやるほうかもしれません。
何か動きのないものをじっくりズームしながらディティールを見て行くなど、こういう、「撮影の語り口」の一部として使われるズームは、さっぱりした被写体を何か有機的な、強いものに変える力を発揮する場合があります。
これはおそらく、カメラマンがその間ズームとピントを制御し続けている、という緊張感に由来するのでしょう。カメラマンの目になって被写体を見ている臨場感を醸し出す効果があるわけです。
クレーンやドリーを使ったショットのように、カメラの背後に人がいて操作することによって生まれる緊張感を、もっとも手軽に出せる手法のひとつがこういう場合のズームかもしれません。

そういえば、僕がまだ十代、8ミリフィルムカメラで撮影したり編集したりに夢中だったころ、夢が突然ズームしてびっくりしたことがありました。
もう一度、ズームする夢、見てみたいですね(笑)。もうムリでしょうけれど。

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: ビジネスマナー | 2011年11月 9日 (水) 12時38分

ありがとうございます!またどうぞ。

投稿: senzaki | 2011年11月17日 (木) 10時13分

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