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2010年1月24日 (日)

映像ディレクションの作法/イマジナリーライン

ぼちぼち梅の花が咲いてきました。
さて、ディレクションの技法について細かく考えるシリーズ。
「繋がるように撮る」の続編という事で、今回は「イマジナリーライン」についてです。

あるカットとあるカットが繋がる予定になっている場合、先行カットと後続カットで被写体の方向性や位置関係が混乱しないように、と考案されたのが「イマジナリーライン」です。短くして単に「ライン」とだけ言う場合もあります。
図にするとわかりやすいの下記ごらんください。
Il_1
これは、よくイマジナリーラインを説明する際に登場する図で、向かい合った二人の人物の間に存在するラインを示したものです。AさんとBさんが向い合っている2ショットを撮影中の図。
この場合のイマジナリーラインは二人を鼻を結ぶ線になります。
カメラが1の場所から二人の2ショットを撮ると、画面の中ではAさんは下手、Bさんは上手に位置することになります。
これはカメラが2の場所に移動しても変わりません。画面に対して奥と手前の関係は逆になりますが、位置関係は、相変わらずAさんは下手、Bさんは上手です。
ところが、イマジナリーラインをまたいで、カメラが3の位置に移動すると、位置関係が逆転してAさんが上手、Bさんが下手になります。
このようにイマジナリーラインを越えて撮影すると、二人の位置関係がフレームの中で左右逆転していまいます。なので、通常、直結するカットを撮る場合には、このラインを越えてはならぬ、とされています。

もうひとつのケースを見てみます。基本は同じなんですが。
Il_2
これは、フレームの中には人物がひとりだけいます。
この場合は、人物の前後方向にラインが引かれます。鼻と後頭部を結ぶ延長線上にラインがある。この人が歩いているとすると進行方向にイマジナリーラインがある、という事になります。
これを越えて撮影すると、人物の向きがフレームの中で逆転します。
1や2の位置で撮影するとAさんは上手を向いているわけですが、3の位置で撮影すると下手を向いてしまいます。歩いているならば進行方向が逆に見えてしまうわけです。
これは車や電車に対しても適用できますね。

この二つが、イマジナリーラインの基本的なあり方です。
つまり、位置関係と方向性を統一させるためのツールです。

普通、このイマジナリーラインは、カメラマンが管理すべきものといわれていますが、もちろん、ディレクターも知っているべき事柄だと思います。

ドラマ的なものでは、人物の位置関係や方向性は重要なのでイマジナリーラインは十分に意識する必要があるし、旅ものなど、人物の移動そのものがテーマになるような場合も意識する必要があるでしょう。
また、ENGスタイルでの取材など、カメラの主観(というか目線)が主役になる場合では、ラインを意識する場面はほとんどないでしょう。

イマジナリーラインというのは、今まで見てきたように、理論なんていうものじゃなく、ひとつの「法則」というか「現象のようなもの」です。
ですので、四の五の言わずにそれを「どう使うか」が重要です。
基本的には、つながるカット同士はイマジナリーラインをまたいで撮影していけない、とされていますが、これもその「使い方」のひとつに過ぎません。

流れを一区切りさせたり、そのカットを強調したいような場合にあえてラインをまたぐと効果的な場合があるし、さらに、「混乱させたい」場合には、意識的にラインをまたいだ構成は効果的です。

また、位置や方向性を混乱させたくないのに、様々な事情でラインをまたがざるを得ない場合には、一度インサートカットを挟む、とか一度ライン上の正面カットを挟む、とか、そもそもカット割りをせずにカット内でラインをまたぐ、とか、視覚的混乱を生じないようにまたぐ基本的な対処方法がいくつかあります。

イマジナリーラインは、要は「規則」というより、視覚的効果を作り出すためのツールのひとつなわけです。
あまりに意識しすぎるとどのカメラ位置もありきたりなものになってしまうし、逆に意識しないと簡単に人物の位置関係や方向性は混乱してしまいます。

僕がよくやるのは、インタビューを複数のカメラで収録する場合、カメラの1台をラインをまたいだ位置に設置するという方法です。こうしておいて、話題のくぎりや強調したいフレーズ部分に、ライン越えのカットを使います。そのカットで目線の方向が変わるので、単調なワンショットの連続にちょっとしたアクセントを加える事ができるわけです。

何年か前に、テレビである映画監督が、「撮影の時、カメラマンがラインにうるさくて困った」みたいな話をしていて、さらに「ライン超えなんて編集でどうにでもなるんですよ」というような事を言っていました。
確かにそうです。
特に、マルチでカメラが回っている場合には、現場のラインがどうのというより、編集で解決したほうがうまく行くと思います。もちろん、編集の技量があっての事ですが。

今回、イマジナリーラインの解釈方法など微妙な話を書こうと思っていたのですが、基本編で終わってしまいました。応用編に関してはまたそのうち書こうと思います。

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