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2013年2月17日 (日)

続・文字と映像

先週の続きみたいなあれです。

下位置テロップについて地味に考えてみようと思います。
下位置テロップは、まあ、説明するまでもないですが、モノの名称や地名、人名、ちょっとしたコメントなどを画面の下位置に小さめに入れるテロップです。
普通白い文字を使い、黒エッジやドロップシャドウで読みやすくします。
このありふれたテロップも、映像ディレクションの技法、と肩肘張って考えると様々な要素があり、深いもののひとつです。
メインをはるタイトルだとデザインとタイミング勝負になるし、それこそケースバイケースになるので、「読みやすく」「かっこよく」ぐらいで特筆すべきことはあまりないんですが(場合によっては読めなくても良い、というケースもあるでしょう)、下位置テロップは汎用的なものである上、多機能なので色々と考慮しなければならない事が多いのです。先週考えたような「文字は映像に優先して視聴者に届く(届いてしまう)」という事を前提にするとその機能の本性がわかってくるような気がします。
ではまず、外観から考えてみましょう。

●下位置テロップの外観
まずは大きさですが、下位置テロップといういうぐらいで、画面の「補足的」意味合いであることが認識できるサイズという事になると思います。
よくバラエティや情報系の番組で使う「下位置だがむやみに大きいテロップ」は、画面の補足というより、画面に優先して「読め!」という意味合いのテロップなので、ここでいう下位置テロップとは役割が違います。
「補足的」というのは、あくまでメインは映像であって、それを邪魔しないサイズ、という意味です。その範疇におさまり、かつ、作品のトーン&マナーに沿っているという大きさや色を心がけます。

例えば、避暑地のカフェを軽いジャズに乗せて紹介するおしゃれな番組で、下位置テロップがバカでかいサイズの白文字黒エッジ角ゴシックというのはあまり考えられません。かっこわるいです。
逆に、お年寄ターゲットの演歌番組で歌詞を表示する下位置テロップが、おしゃれなフォントの控えめなサイズものでは、読みにくい。しかもノリが悪すぎ。

いずれにしても、下位置テロップは「補足説明をする」という機能をもっているわけなので、「読みやすい」というのはマストだと思います。文字列がキチンと機能を果たすには、視聴者が「最小限の努力で読める」必要があります。

「補足にすぎないけれどちゃんと読んでください」という心持ちで入れるのが「下位置テロップ」です。

では、下位置テロップに担わせる機能別をケーススタディ的に少し考えていくことにしましょう。

●名称を入れる
写っているものの名称や、地名を入れる事があります。この場合は、「違和感が出たりや突出したイメージにならないように、そしてもちろん読みやすく」ということで、ほどよいタイミングでほどよい時間入れればいい、という程度。
たいていこういう場合は、この種のテロップの背景にふさわしい引き画を流れの最初の方にに使うことが多いのでそこに、すっと入れる。あまりカットアタマぎりぎりだと忙しい感じがしてしまう場合があります。ナーションがある場合は、ナレーションでその名称を言う場合も多いので、それとのタイミングを図った方が気持ち良い場合もあります。
機能としては、そのシーンに「見出しをつける」という意味合いがあります。

●コメントのフォローをする
映像の中で誰かが語っている場合、そのしゃべった内容をフォローするテロップを入れる事がままあります。
この場合は、目的によってタイミングが重要になってきます。

その1)コメントの見出しを入れる場合
「今期の収益につきましては、前年比**パーセントの増収を確保できまして、云々...」
といったコメントに
「今期の収益について」
などと入れる場合。これはコメントのアタマか、少し前に出して、コメントいっぱい引っ張っておくか、ある程度の尺入れたて読ませたら、適宜ひっこめます。
視聴者はコメント聞きながら、その主要テーマについて下位置テロップを読むことで確認できるわけです。

その2)コメントの要約を入れる場合
上記のコメントに対して
「今期の収益は前年比**パーセント増」
などと入れる場合です。
視聴者は、コメントを聞きながら、それを若干ですが先回りして概要を知る、ということになります。
この場合、若干タイミングに考慮すべき点が出てきます。
意味的には、該当するコメントの最初に出して、コメント一杯ひっぱっておく、が基本になります。
ただし、人間の習性として文字が表示されるとまっさきにそこに目がいってしまいます。ですので、しゃべっている人の表情を見せたい場合には、見せたい表情を避けていれる必要があります。しゃべりアタマの笑顔が重要ならば、笑顔を十分見せておもむろに入れる、など駆け引きが必要になります。

その3)コメントの内容に念を押したい場合
これは上記その2)とほぼ似たようなものですが、コメントが終わってから後追い要約を入れるような場合です。
例えば、「今期の収益につきましては、前年比**パーセントの増収を確保できまして」と来た後「これも、社員の皆さんの努力のたまものでして、云々...」とコメントが続く場合、後ろのコメントに、前のパラグラフの要約を入れることで、視聴者が文脈を見失うのを防ぐ、など。
この場合は前半のコメントとテロップとの距離が問題になります。あまり時間が開くと間がぬけてしまうので、前半のコメントの終わりぎりぎりで何気なく出す、みたいな感じでしょうか(この辺のさじ加減は好みによりますが)

いくつか例を考えてみましたが、共通して考慮すべきは、しつこいようですが、テロップは「情報として強い」という事です。
普通の場合、映像よりテロップの方が強い。補足的な意味合いだといっても、文字=言葉による情報は何にもまして影響力があり、映像を補足しながら「規定」する力を持っています。
そのため、テロップが出た時点で、視聴者の注目を奪ってしまう。そこを考えて使う必要があります。

●ナレーションとの関係
ナレーションとテロップで同じ言葉を使う場合、ナレーションのタイミングに下位置テロップを合わせたほうが気持ちい場合があります。
「太郎君は9才です」というナレーションに「太郎君(9才)」というテロップを当てる、など。
これが、他のテロップとの兼ね合いでタイミングがずれて「妹の花子ちゃんは7才です」というところに「太郎君(9才)」が出てしまうと、視聴者の脳は軽い混乱をきたします。
これが、ナレーション「太郎くんは9才です」に、テロップ「家族が暮らすのは愛知県犬山市」などだと、あまり混乱はおきません。
同じ名詞でも、人名と地名は別のカテゴリーに属するため、脳がきちんと対応できるのでしょうか。

ナレーションがある場合、そのナレーションは映像との関連の中で読まれます。
そこに文字情報がからむ場合には、さらに、その上に別の「テロップレイヤー」を構築するわけなので、映像との関連プラス、ナレーションの言葉との関連が加わってきます。
映像作品は情報を組紐のように編んだものです。その主要要素が、映像、音声としての言語(ナレーション)、そして文字としての言語(テロップ)です。で、通常はそこに音楽というまた別の要素が加わって、実になんというか、複雑な様相を呈するわけです。

●下位置テロップと映像がサシで勝負する場合
これら以上にタイミングが重要なのが、アクションにからむ場合です。その中でもナレーションがなく、テロップのみで映像の解説するような場合は、同じ「視覚情報」という土俵で映像と文字情報(テロップ)がサシで勝負してしまいます。
例えば、下記のような例を考えてみましょう。

映像1:サバンナでチーターがガゼルを追いかけ、追いつき、ガゼルに飛びかかって倒す(ロング)。
映像2:ガゼルを食べているチーター(アップ)。

この2カット構成されているシークエンスに、下記の解説テロップをいれます。ナレーションはなし。

テロップ:チーターは時速**キロで走り草食動物を襲います

この場合、3つの可能性があります。

その1)ぴったり合わせる
ガゼルを追いかけ走っているチーターの映像に「チーターは時速**キロで走り」と入れ、襲いかかった瞬間に「草食動物を襲います」と入れる。
この場合、視聴者は、文字に目が行ってしまいますので、走っているチーターの体の形状や、襲いかかり方、みたいな決定的瞬間を見そこねてしまう可能性があります。ただ、確実に文字を読み、その知らせたい情報を受取るでしょう。

その2)映像で起こっている事を見せてあとから解説する
チーターがガゼルを襲うところまでを説明なしに見せて、あと付けでテロップを読ませます。
視聴者は映像の本来の意味をしらないまま事実を見続け、その記憶の中でテロップを読むことで解説を受け入れます。
へえ、と面白く映像を見たあと、それについての解説を受け取ることになります。

その3)まず解説してしまい、その後を追って映像で実証する
チーターがガゼルを追いかける場面でテロップ入れ、襲う前にひっこめます。
視聴者は、チーターの捕食修正を手っ取り早く知った上で、襲うシーン、食べるシーンを見ることになります。
意外性をあらかじめ塞ぐことで、解説内容に沿った路線で映像を見させることができます。

これ以外にも、どこかでストップモーション入れて解説読ませるなど、いくつかバリエーションは考えられまが、その中のどれを採用するかによって、シーンの見え方、理解のされ方が変わってきます。

こうして考えて来ると、下位置テロップの問題は、情報をどう組み合わせ、どう構築するか、つまり「編集」そのものを考えていることに気づきます。
時間軸上で情報を組み合わせる事が映像を作るということだし、それはそのまま「編集」するということです。そんなこんなが端的に現れるのが「下位置テロップ」かもしれません。

どれもこれも、まあ、ちっぽけで地味な話なんですが、映像のディレクションという仕事の90%はこういう地味な判断の繰り返しです。

下位置テロップも使いこなせないようではプロのディレクターとしては失格ですが、下位置テロップですら使いこなすのはなかなか難しいもなんだよな~、と思います。

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