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2014年5月11日 (日)

独居老人スタイル

気がついたもう半年近くもほったらかしにしていました…。心をいれかえます。
アクセス解析をみるとこんな体たらくのブログにも、一日数十人いらしていただいておりまして、たいへん申し訳ない…。
前にも心を何度も入れ替え、週一更新する!などとほざいていたのですが、どうせ守れないので、気ままになるべく更新します!と控えめに宣言しておきましょう。

久々の今回は、本の感想文です。

読んだ本はコレです。

都築響一著
独居老人スタイル(ちくま書房)

アオリの文章は、

 「ひとりで生きて、なにが悪い!
  あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイル
  かもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する」

というもの。

「独居老人」というなんとも寂しい感じの言葉を「唯我独尊ライフ」みたいな意味に置き換えようという本です。
一人で暮らし、勝手にあれこれやってる老人を取材してそのライフスタイルをインタビューと写真で綴っています。

<1>
新聞で書評を見た時から、この本、気になっていました。
というのも、僕も50も半ばで子無し夫婦ぐらし。周りの同年代を見回してみると50代独身や、結婚していてもうちと同じ子供なしが、ぞろぞろいます。
だいたい親も片方はすでになくなっているとか、兄弟も疎遠だったり亡くなっているとか、一人っ子だったり、などなど。早晩、天涯孤独の身の上になるヤツらばかりです。
もう、この先、僕やカミさんもふくめて独居老人がバンバン増産されつつある状況なわけです。
この状況の中で、幸せな老後像を「家族や孫に囲まれてゆったりと好きなことをして過ごす」なんて寝ぼけたことを考えてもはじまりません。そもそも家族というものが消滅しているのですから。

今までの「幸せな老後」のイメージをすっかり払拭して、「老後2.0」や「NEW WAVE老後」を考えないことには、いかんともしがたいなあ、と。
自分のためにも、これからの世代のためにも。もう、これ、喫緊の課題ですよ。
年金とか、保険とか、コミュニティとか、シルバーパワーの活用とか、そういう制度や構造の話ではなくて、年老いて生きる本人の意識の問題として、新しいことを考えていかないとマズイ。
おそらく、僕の同年代である著者の都筑氏の意識としてもそれはあったと思う。

というわけでこの本を「老後の教科書」のようなものとして読んでみたかったのです。

<2>
で、「独居老人スタイル」です。
感想をひとことでいうと、面白かった。
でもそれは、もともと読み始めた問題意識とはまた別の面白さでした。
なぜ面白かったのかというと、16人が16人とも「変わり者」だからです。変人の生活のディティールというのは、ただそれだけで面白い。その変人たちが、いきいきとして、また、すこしとまどったりしながら、今の自分の生活を語っている。
首縊りパフォーマンスを延々自宅で繰り広げる人、若者を舎弟にしながらぶいぶい言わせるブティックの経営者、誰も来ない映画館と所有フィルムを飽きずにメンテし続ける人、などなど。

他の読者のレビューを読むと多くの人が「経済的には貧しくても、心が豊かであれば幸せな生活を…」など書いていますが、それにはちょっと違和感があります。

この人達、僕は、逆に、実はいろんな面で恵まれてるなあ、と思う。
それなりに社会が豊かな時代に現役時代を暮らしてきて、自分なりのテーマを持っていたり、こだわりを貫くパワーがあったり、そもそもこだわりを持っている事自体、恵まれています。
しかも、持ち家があったり、すごく安い家賃で家を貸してくれる人に出会っていたり、活動に共感してくれるボランティアがいたり…。さらに、全員健康です。幸せな生活であってあたりまえなのではないでしょうか。

おそらく、今でいう「幸せな老後」の一種風変わりな姿、いわば「変種」のようなものが、ここに登場している老人たちの生活なのかもしれません。
一部、これからの単身高齢者の生活を先取りしながらも、世間的に恵まれた老人たちと同様、「持てるものの幸せ」を享受しているように見えました。

<3>
多様な生活をしている16人から、あえて、共通項を抽出するなら、それは、自分が好きな「何か」に囲まれて生活している、ということかなあ。
それは好きなコレクションだったり、自分の作品だったり、商品だったり。
そこには賢い断捨離や、物を持たないノマドな生活、シンプルなおしゃれな生活、なんてものはありません。
自分の欲望が手に触れられる形になった「もの」に囲まれています。
ほとんどゴミ屋敷のようになりながら、そういうものに囲まれ、それが自分が立脚すべき「巣」になっています。
その巣に安心して潜り込んでいるようなのです。

僕自身もものが捨てられない性分ですが、いわゆる「断捨離」というのは、ある種の精神疾患だと思っています。好きなものや捨てられないものは自分の中の核心をなんらかの形で支えているものです。捨てられないのは「捨てたら自分の存在が危うくなる」からです。なので、断捨離でものを捨てるのは、精神的なリストカットのようなものだと思います。
捨てることによって本当に自分の好きなものだけを選んで持つのだ、などと「捨てる論者」は言いますが、それも病気です。好きなものに「一番」などあるわけがない。自分がかける「好きなものの網」にかかったものが全部自分が好きなものなのですから。そこから「一番」をあえて選ぶ、という事自体がもう、病んでいる、と思います。

もうひとつ、共通項は、「自足できる」という事?
経済的な意味合いというより、精神的に自足できている。
社会的なつながりを切ってしまっても、それなりに自足でき、楽しめる「しぶとさ」のようなものも共通していると思います。
それは「心の豊かさ」というようなものではなく、もっと生物的な、ヒトという動物の一個体が生き延びていくための、基礎体力みたいなものではないでしょうか。

<4>
この16人の中で、唯一、僕らの世代の老後に直接参考になるのは、おそらく、漫画家の川崎ゆきおさんです。年齢は61才なので、老人というにはちょっと抵抗がありますが…。
川崎ゆきおさんは、前衛的な漫画誌、「ガロ」でデビューし、バブル期の雑誌でも活躍した漫画家・イラストレーターです。僕も十代のころ、ガロで作品を読ませて頂いていました。
現在は、大阪の実家で暮らしながら、散歩とネットの日々を送られているようです。

これからの老人生活、「老後2.0」を考える上で欠かせないのがネットとITだと思いますが、ここに取り上げられている16人の中でネットを駆使しているのは、唯一川崎ゆきお先生だけです。
年齢は、僕の一世代ぐらい上ですがネットやITの経験でいうとほぼ同世代です。ワープロ専用機に始まってPC、ブログ、現在は電子書籍…。おそらく、僕が川崎先生と同じ年令だったら、同じ境遇だったら、間違いなく同じような事をやっているでしょう。
ほぼ毎日ブログを更新し、おびただしい電子書籍を出版、さらにはメルマガまで…。

川崎ゆきおサイト


<5>
老人の生活の良いところは、社会性という事から(全部ではないにしても)自由だし、たいして生産性を期待されていないというところでしょう。別の言い方をすれば、商業的な成功や成果から自由であるということです。
この本に取り上げられた16人のうち7人もが、商業性から遠く離れたなんらかの創作活動を行っているというのは、偶然ではないと思います。

それはまるで思春期の少年少女のような身分です。

膨大に膨れ上がった老人たちが、次々に、そしてギラギラと「自分探し」を始める世界がこれからやってくるのか?
なかなか、面倒くさく、面白くなりそうな気が。

<6>
あとがきに、別のエッセイの引用の形で、この本のテーマがずばり書いてありました。
「要は、死ぬ5秒前に「あ〜おもしろかった」と思えるかどうか」

そうなのだと思います。
僕としては「わりあい面白かったじゃないか」程度でも十分満足ですが。

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今後も本や映画の感想文を書きます。


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コメント

ブログの放置・・・、同じく。(^-^;

投稿: fukuda | 2014年5月12日 (月) 09時26分

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