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2016年5月26日 (木)

感想文:「圏外編集者」

これも話題の本。Kindle版で読みました。

「圏外編集者」」都築 響一 著

今、なにがしかのものづくりを生業にしている人にとっては、読んでおいたほうが良い重要な本という気がしました。

都築響一 氏の存在を知ったのは、はるか昔、テレビ番組のディレクターをしていた時でした。
フジテレビのワーズワースの冒険という番組で、「部屋」というテーマで番組を作っていたのです。その時の取材資料としてTOKYOStyleを購入し、まんまとその中の何軒かのお部屋を取材もさせてもらいました。
その時は、この分厚い写真集が、都筑氏のたったひとりの手で取材され、撮影され、編まれたのだということは知るよしもありませんでした。当時、パートパートの専門家がよってたかって作る民放キー局大規模制作体制にがっちり組み込まれた身としては想像もできませんでした。しかも、氏は、この本のために「はじめて」カメラを買い((しかも4×5!)」、撮影を自力で始めたという…「だってそうでしかできねえじゃん、これ」という思いとともに。
今回、この本で、TOKYOStyleの作られ方を知り、まさに「ほえー」という気持ちです。

この本、おそらく、僕と同じように、80年代~90年代初頭ぐらいから、がりがりものづくりをやっていた世代には、それが出版か、映像か、それともイラストか、音楽か、にかかわらず、面白く読めると思います。共感と若干の反発、そして、なにか、色々なものをつきつけられてしまいます。自分の姿勢に対する自省促す巨大な?マーク。
語りおろしであるところも、理屈っぽくならず読みやすい。

確かに都筑氏は、編集者として、ものづくりをする人として、業界的には特殊なのかもしれませんが、この本で語られている、その「作る動機」と行動はほんとうに、ごくまっとうです。このまっとうさが「異端」に見えてしまうほど、現在のものづくり業界はおかしなことになっているのかもしれない。
そうやって、まっとうにものを作ってきた都筑氏の現在の活躍の場は、個人の有料メルマガです。60才にならんとする大ベテラン編集者が出版業界から離れて、インディーズやってるというのが、現在の、いわゆる「業界」の不健康さを示しているのではないか。それは出版だけではなく、映像や音楽、アートだって。

都筑響一メールマガジン
http://roadsiders.com/

本の中では、このメルマガに関連して、現在のデジタル化されたものづくりやコミュニケーションについても触れています。その認識はいちいちその通り!と頷ける指摘ばかり、しかも実践がともなっているので説得力があります。
この本(話)の良いところは、結局、ものづくりを生業にするって、作る能力やセンスだけじゃなく、生活感覚やら、お金やら、健康状態やら、それこそ生きていることがそのまま全部反映されているもの、という前提で書かれているところ。
精神論や根性論とお金や生活の話が切り離されない、健全な状態で語られていると思いました。

思えば、私もそれこそ「圏外」的な欲望が人一倍強いはずだったし、そのせいでこんな仕事をしているわけですが、この本を読んで、その欲望の強度がこのところ弱まってしまい、いつのまにかやや普通のことしばかり考えるようになってしまっていたかもな、と反省させられました。

……これは超重大な問題だ。修行しなおす!

都築響一氏の著書は、過去、こちらでも感想文書いています。
「独居老人スタイル」


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